日本三大車窓・九州編
大畑駅のみどころ
大畑(おこば)駅はJR九州・肥薩(ひさつ)線の駅。熊本県人吉(ひとよし)市にあります。日本で唯一、ループ線とスイッチバックを併せ持つ駅として、鉄道マニアによく知られています。アニメ化もされた鉄道マンガ「鉄子の旅」でも紹介(ネタに)され、登場する月刊IKKI編集長が狂喜乱舞していましたが、それほど印象的なのかと思い、私もいつか訪れてみたいと思っていました。
一度目は早朝に車で立ち寄ってみたのですが、本当に山の奥深くにある細い生活道路を、レンタカーのカーナビ頼りにどうにか辿りつきました。行き止まりで細長い駅構内、それと並行した未舗装道路があるだけで、ずっと車を停めておけるスペースはありません。他に誰か来たらどうしようと思いましたが、すれ違う位はできそうです。車を停めるという意味では、路線の先にある真幸(まさき)駅の方が駅前スペースがあって便利です。
大畑駅の木造駅舎はとても風情があり、落ち着いたたたずまいです。駅舎内の壁に絵馬のごとく名刺がびっしり貼られていますが、「名刺を貼ると出世する」といういわれがあるとか。知っていたら名刺貼ってくればよかった…。
この駅は開業時、SL(蒸気機関車)の給水所として設けられました。今も駅構内にレンガ造りの給水塔が残っています。
肥薩線のみどころ
肥薩線はループ線とスイッチバックの名所です!ループ線とは、自動車道路でもたまにお目にかかりますが、螺旋(らせん)状になった路線のことです。
鉄道は自動車ほど軽くはないので、相当に馬力がある機関車でも、あまりに急こう配では登れません。そのため、線路自体をなるべく傾斜がきつくならないように、山の周囲に沿ってぐるぐる大回りして距離を稼いで、ゆっくり時間をかけて山を登っていきます。
大畑駅から隣りの矢岳(やたけ)駅方面に行くとき、列車はzの字を描くようにジグザグに山を登っていきます。これがスイッチバックで、v字ではなくz字のように二度ターンします。どれだけ急こう配かは行ってみてのお楽しみ。
列車は、大畑駅の行き止まりから少し傾斜を登りながら進んで、山間部行き止まりで一時停車します。この近辺景色の案内看板が線路にそって立ち、停車中は案内放送もあったりしてとても親切です。そこからまた進行方向を変えて反対側に進むと、ほどなく大畑駅が眼下に見えます。ここから先は日本三大車窓の一つに数えられています。素晴らしい眺望で山を登りつつ、眼下に広大な陸地が見下ろせる景色。そして列車は、山間部のループ部分へと入っていきます。スイッチバックとループを組み合わせた形状はカタツムリみたいで、地図で見ると面白いです。その先の先に、真幸(まさき)駅というスイッチバック駅があり、見どころが続きます。
行き方
肥薩線の人吉(ひとよし)駅~吉松(よしまつ)駅区間には、「観光列車いさぶろう・しんぺい号」が走っており、山間部の一番美味しい部分を堪能できます。JR九州の「おもてなし」木製インテリア、展望窓、木造の趣あるテーブル席で、車内販売や観光のための車内放送もあり、一度は乗ってみたい列車の一つ。時間があるなら、ぜひ乗ってみてください。
「いさぶろう号」が人吉(北のほう)→吉松(南のほう)、「しんぺい号」が吉松(北のほう)→人吉(南のほう)へ向かう列車です。 吉松から乗るときは、吉松→真幸(まさき)→矢岳(やたけ)→大畑(おこば)→人吉、と、山を下りていく恰好になります。テーブル指定席がほとんどのため、駅で指定券を買う必要がありますが、形式上わずかに自由席もあり、満席で乗れないということはありません。乗車時間は1時間ちょっとです。スイッチバックを眺めるときに、もし山側の席にいたら、席を立ってでも眼下を見に行く価値があるでしょう。
特急「はやとの風」を乗り継げば、九州新幹線に接続する鹿児島中央駅から、肥薩線の主要駅で「しんぺい号」の起点・吉松駅まで1時間半ほどで着きます。